第3回:同じAIなのに、なぜ「あなたらしさ」が出るのか?


・AI製の綺麗な文章なのに、渡すのをためらいませんか?
・包丁は「角度」で切れ味が変わるというお話
・あなただから作れる指示書は宝物
「AIを使うと、誰が作っても同じようなものしかできないんじゃない?」
最近、そんな声を耳にすることがあります。
ボタンひとつで、綺麗な文章や企画がパッと出てくる。
それを見ていると、
「誰が使っても同じ結果になるなら、人間が工夫する余地なんてないんじゃない?」
と思ってしまうのも、無理はありませんよね(^_^;)
でも、本当にそうなんでしょうか??
たとえば、包丁を思い浮かべてみてください。
同じ包丁を使っても、レシピに書いてある通りに野菜を切る人と、
「食べる人が、口の中でどう感じるかな?」
と考えながら、刃の角度や厚さを微妙に変える人とでは、できあがった料理はきっと違ってきますよね。
AIも、実はこれとよく似ているんだと思うんです。
同じ道具を使っているのに、できあがるものが全然違う。
その差はいったい、どこから生まれるのでしょうか?
たとえば、こんな場面をイメージしてみてください。
■ 完璧なのに、なぜか渡しにくい「引き継ぎメモ」
来週、急な私用や研修で、あなたが2〜3日オフィスを留守にすることになったとします。
自分がいない間、隣の席の後輩に、ちょっとした不在時の対応をお願いしなければなりません。
「手早く済ませよう」
そう思って、話題のAIを開きます。
そして、マニュアル本に書いてありそうな「正しいプロンプトの書き方」に沿って、こんな風に入力しました。
『不在時の業務引き継ぎメモを作成してください。
期間:来週火曜日から木曜日まで
引き継ぐ相手:同じチームの後輩
内容:メール確認、電話対応、緊急連絡の3点』
エンターキーをポン。
すると、ほんの数秒で、見事な箇条書きができあがります。
『1. 毎朝10時までに共有メールボックスを確認し、新規の問い合わせを精査すること』
『2. 取引先からの電話対応時は、用件を正確にメモし、至急度に応じて各担当者へ連絡すること』
『3. 緊急性の高い事案が発生した場合は、速やかに所属長へ連絡すること』
誤字脱字もない。
項目の漏れもない。
まさに教科書に載せたいくらい、完璧な業務連絡です。
「おぉ、すごい。一瞬でできちゃったぞ!」
そう感心してプリントアウトしようとした、その瞬間。
ふと、手が止まります。
「……これ、後輩に渡して大丈夫かな?」
その整いすぎた紙を見つめていると、なんだか胸の奥がチクッとする。
「自分が急に休んで、余計な負担をかけるんだよな……」
「こんな四角四面の指示書をポンと渡されたら、なんだか監視されているみたいで息苦しくないかな……」
文句のつけようがないほど正しい。
なのに、なぜか手渡すのをためらってしまう。
あなたにも、そんな経験はありませんか?
■ 「手順」は同じ。でも「流儀」は違う。
なぜ、こんな違和感が生まれるのでしょうか?
私は、AIという道具を使うときに、
「手順」だけを考えてしまっているからではないかと思うんです。
仕事や道具の扱い方には、大きく分けて2つの層があります。
ひとつは、「手順」。
もうひとつは、「流儀」です。
「手順」というのは、
・ツールの操作方法
・プロンプトの書き方
・どんな順番で作業するか
といった、「知っているか」「正しく再現できるか」という部分です。
マニュアル通りにやれば、誰がやっても、それなりの答えが出てきます。
一方の「流儀」は、ちょっと違います。
「自分は、何を大切にして人と向き合いたいのか」
「相手に、どんな気持ちになってほしいのか」
そういう、その人自身の想いや価値観のことです。
これは、人によってまったく違います。
そして、正解もひとつではありません。
「AIを使えば、誰が作っても同じになる」
というのは、もしかすると、この「手順」だけをなぞっている状態なのかもしれません。
正しい手順でAIにお願いすれば、AIは「世の中の平均点」を返してくれます。
でも、そこにはまだ、
あなたの体温も、
相手への気遣いも、
入っていないんですよね…。
■ あなたの中にある「こうしたい」が、実はスゴい
ここで大切になるのが、
「この場面で、自分は何を大事にしたいんだろう?」
という、あなた自身の想いです。
たとえば、先ほどの後輩なら、
「自分がいない間、余計な気苦労をさせたくないな」
「真面目な子だから、判断に迷ったら一人で抱え込んじゃうかもしれないな」
「何かあったとしても、『全部私のせいにしていいからね』って安心させてあげたいな」
こんな気持ちが出てくるかもしれません。
こうした、
「こうしてあげたい」
「こういう風に接したい」
という思いやりや、人との接し方に対する自分なりの考え。
これこそが、あなたの「流儀」なんです。
そして、この流儀だけは、どんなに賢いAIでも最初から完璧には作れません。
なぜなら、それはあなたの経験や、これまで人と接してきた中で生まれたものだからです。
■ AIの「骨組み」に、あなたの流儀をひとさじ
では、先ほどの引き継ぎメモに、あなた自身の「流儀」を加えてみたらどうなるでしょう?
AIが作ってくれた骨組みを見ながら、こんな風にお願いし直してみます。
『項目はそのままでいいよ。
でも、引き受けてくれる後輩は、最近自分の仕事でも手一杯で、すごく気を使うタイプなんですよ。
「急ぎじゃない用件は全部保留にして、私の机の上に山積みにしておいてOK!」
「判断に迷ったら、絶対に一人で抱え込まず、私の戻りを待ってね」
という一言を書き添えて、肩の力を抜いて留守番できるような、温かいメモに書き直して』
どうでしょう?
同じ「業務引き継ぎメモ」なのに、ずいぶん表情が変わってきますよね。
必要な仕事の内容は、ちゃんと書いてある。
でも、それだけじゃない。
行間から、
「大丈夫だからね」
「無理しなくていいからね」
という、先輩の優しい声が聞こえてくるようなメモになっています。
受け取った後輩も、
「あぁ、先輩は自分のことを気遣ってくれているんだな」
と、ちょっとホッとするかもしれません。
これが、「手順」に「流儀」を加えるということなんだと思います。
■ 同じ包丁でも、切る人によって料理は変わる
考えてみれば、これはAIに限った話ではありません。
同じ包丁を使っても、
「とにかくレシピ通りに切る人」と、
「食べる人のことを考えて、少し切り方を変える人」では、できあがった料理が違ってきます。
包丁そのものが違うわけではありません。
使う人が、そこにちょっとした「考え」を加えているんですよね。
AIも同じです。
同じパソコンを開き、
同じAIを使い、
同じようなプロンプトを入力する。
それでも、
「ただ正しいだけの文章」になる人と、
「なんだか、この人らしいな」と感じる文章になる人がいます。
その差を生み出しているのは、プロンプトの小手先のテクニックだけではありません。
「自分は、何を大切にしたいのか」
「相手に、どう感じてもらいたいのか」
そんな、自分自身の「流儀」をAIに伝えているかどうかなんです。
■ 「AIを使いこなす」より、大事なこと
世の中では、
「AIを使いこなすための便利な手順」
が、たくさん紹介されています。
もちろん、それも大切です。
AIへの頼み方を知れば、できることは増えていきます。
でも、手順を覚えること自体は、極端な話、マニュアルを読めば誰でもできるようになります。
その先にある、
「自分は、何を大切にして人と向き合いたいのか」
という部分は、マニュアルには書いてありません。
だからこそ、AIが出してきた整った文章を見ながら、
「いや、私の言い方はこうじゃないな」
「自分なら、相手にこんな言葉をかけてあげたいな」
と、一度立ち止まってみる。
そして、
「ここを、もう少し自分らしくして」
とAIに伝えてみる。
その一手間が、AIとのやり取りを、ただの「作業」から「考える時間」に変えてくれるのだと思います。
AIに全部やってもらうのではなく、
AIという道具に、自分の「流儀」をちょっとだけ足してみる。
すると、同じ道具を使っているのに、ちゃんと「あなたの仕事」になっていく。
これって、なかなか面白いことだと思いませんか?(^^)
AI時代に「考えるチカラ」を育てるというのは、難しいことをたくさん覚えることではないのかもしれません。
AIが作ったものを見て、
「うーん、私ならこうするな」
と思えること。
そして、その「こうするな」を、少しずつ言葉にしていくこと。
そこに、あなたにしかない「流儀」が見えてくるんだと思います。
今日もAIを使うときは、
「正しい答えを出してもらおう」
だけではなく、
「私なら、どうしたいかな?」
と、ちょっとだけ考えてみてください。
その小さなひと手間が、AIの答えに、あなたらしい味を加えてくれるかもしれません(^^)

Q1:AIに正しい手順でお願いすれば、それで十分じゃない?
A: 正しい手順でお願いすれば、AIはきちんとした「平均点」の答えを出してくれます。
そこに自分の考えや相手への気遣いを加えることで、少しずつ「自分らしい答え」になっていきます。
Q2:「流儀」って、難しいことを考えないといけないんですか?
A: そんなに難しく考えなくて大丈夫です。
「相手に安心してほしい」「自分なら、こういう言い方をするな」という、小さな気持ちも立派な「流儀」です。
Q3:AIに「自分らしさ」をどう伝えればいいの?
A: AIが作った文章を見て、「いや、私ならこうするな」と思ったところを、そのまま伝えてみましょう。
自分が大切にしていることを少しずつ付け足していけば、AIの作るものにも、あなたらしさが出てきます。
Q:急ぎの連絡や引き継ぎメモを作るとき、実務ではどんな言葉をAIに足せば「自分らしさ」が出ますか?
A: 日時や用件といった業務情報(手順)に加えて、「受け取る相手の今の状況」や「かけてあげたい一言」をそのまま足してみてください。
たとえば「相手は今忙しいから、急ぎじゃない用件は保留でOKと伝えて」「ミスしてもフォローするから安心して、と書き添えて」といった、あなたならではの気配りを1行添えるだけで、冷たい指示書から温かい仕事のメモに変わります。
Q:実務でAIに指示を出すとき、自分の「流儀」がパッと思い浮かばない場合はどうすればいいですか?
A: 最初から立派なこだわりを用意しなくて大丈夫です。
まずはAIに普通にお願いしてみて、出てきた文章に対して「あ、この言い回しは自分なら絶対にしないな」「ここ、ちょっと突き放した感じがするな」と首をかしげてみてください。
その「なんか違う」と感じた部分をそのままAIに言い直すことこそが、あなたの流儀を仕事に吹き込む第一歩になります

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