「走らないで!」より、伝わる言葉は?

「いつもキレイに使ってくれてありがとうございます」

そんな言葉が書かれていると、不思議と気分良く「自分もキレイに使おう」と思いますよね?

そんな風に『こうしてください』と言わなくても、なぜかそっちを選びたくなる。そんな、ことばや見せ方の小さな工夫(Nudge(ナッジ))を紹介していきます。

「走らないで!」

「散らかさないで!」

「そこに置かないで!」

施設の廊下でも、職場でも、お店でも。

気づくと、「〜しないで」の張り紙ばかりになっていること、ありませんか?(^_^;)

どれも、理由があって書いたお願いです。

でも、貼る枚数が増えるほど、なんだか怒っているような感じになってしまう…(^_^;)

これでは「気持ちよくルールを守ってもらう」のは難しいかも知れません。そこで、こんな言い方に変えるのはいかがでしょう。

「代わりにこんな風にしてほしい」

■「やめて」の、その先を伝える

たとえば、廊下の掲示です。

Before:「廊下を走らないでください」

After:「廊下は、ゆっくり歩いてお進みください」

「走らないで」でも、もちろん意味は伝わります。

ただ、「ゆっくり歩いて」と書くと、してほしい動作まで言葉になります。

他にも「お気をつけください」「マナーを守りましょう」も、よく聞く表現ですね。

でも、どこに気をつけるのか、何をすればよいのかは書いておらず、読む人に任されています。

「ドアの前を空けてお待ちください」

「お荷物は、足元のかごへどうぞ」

こう書いてあれば、次にどうするかを決めやすくなります。

丁寧な言葉を増やすよりも、動作をひとつ、具体的にする。

それが今回の工夫です。

■ あなたの現場なら、どう言い換える?

ここからは、考案した文例です。効果を実証した事例ではありません。場所や設備など、実際の運用に合わせて使ってください。

① 図書館で、通話を控えてほしい時

Before:「館内での通話はご遠慮ください」

After:「お電話は、入口横の通話スペースでお願いします」

Point:通話をやめてほしい場所だけでなく、通話できる場所も伝える。

急ぎの電話が来た人にも、「では、どこへ行けば?」の答えを用意できます。

② お店で、繊細な商品を守りたい時

Before:「展示品には触らないでください」

After:「手触りは、手前の見本でお確かめください。展示品にはお手を触れずにご覧ください」

Point:「確かめたい」というお客様の気持ちに、別の方法で応える。

禁止を消す必要はありません。触ってよい見本を用意し、その入口を先に伝えます。

③ 地域の集会所で、椅子を片づけてほしい時

Before:「椅子を出しっぱなしにしないでください」

After:「使った椅子は、入口横の台車へお戻しください」

Point:「片づいた状態」を、具体的な行動にする。

台車が見つけにくければ、写真や矢印を添えてもよさそうです。持ち運びが難しい方には、係へ声をかけてもらえる案内も用意したいですね。

④ 職場で、確認漏れを減らしたい時

Before:「添付忘れに注意!」

After:「送信前に、添付ファイルの名前をひとつずつ確認しましょう」

Point:「注意する」を、その場でできる確認動作に変える。

実際にメールを送る前のチェック項目として使います。「もっと気をつけて」だけで終わらせない工夫です。

⑤ 地域イベントで、出入口を空けておきたい時

Before:「入口付近に立ち止まらないでください」

After:「お待ち合わせは、右手のベンチ前でどうぞ。出入口は空けてお待ちください」

Point:待ち合わせという目的をかなえながら、通り道を空けてもらう。

もちろん、案内した場所に余裕があり、別の通行を妨げないことも確かめておきましょう。

■「禁止を丁寧にする」とは、少し違う

「置くな!」を、

「置かないよう、ご協力をお願いいたします」にする。

口調はやわらかくなりました。

でも、「どこに置けばいい?」は、まだ残っています。

そこで、

「お荷物は、こちらのかごをご利用ください」。

相手が動くための手がかりを足すんですね。

「禁止の言葉を使うと、脳が理解できない」という話ではありません。

言い換えれば、誰もが必ず従うというわけでもありません。

今回は、してほしい行動を具体的に示す、伝え方の工夫として考えてみましょう。

アメリカの幼児向け子育てガイドでも、やめてほしいことだけでなく、してほしい行動を明確に伝えることを勧めているんだそうです。

これは小さい子への声かけのコツで、職場やお店での効果を約束するものではありませんが、「次にすることを言葉にする」という点は同じですね (*^^*)

■ はっきり止める言葉が必要な時も

危険な場所への立ち入りなど、明確に止める必要がある場面では、「立入禁止」「止まって!」を曖昧にしないことが大切です。

今回の工夫は、禁止を全部なくすことではありません。

たとえば、

「この先は立入禁止です。受付は左側の入口へお進みください」

のように、必要な禁止と、その後の行動を組み合わせることもできます。

そして、言葉だけ変えても、行動できる環境がなければ困ってしまいます。

「かごへどうぞ」なのに、かごが満杯。

「こちらでお待ちください」なのに、通路が狭い。

これでは、協力したくてもできませんね(^_^;)

相手ができる動作か、必要な物や場所はあるか。

そこまで含めて、お願いを考えたいところです。

■ 張り紙を1枚、見直してみませんか?

いま使っている「〜しないでください」を、ひとつ選んでみましょう。

そして、自分に聞いてみてください。

「では、代わりに何をしてほしい?」

歩く。戻す。確認する。別の場所で待つ。

その動作を、短い一文にしてみます。

「ダメ」は伝えた。

その次の一歩も、伝えているかな?

そんな目で見直すと、いつもの張り紙が、相手の行動を助ける案内に変わるかもしれませんね(*^^*)

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