第5回:思考の第一歩は「なんか違う」という違和感(違和感マーカー)


・AIの「それっぽい言葉」に、つい流されてしまう理由
・「なんか違う」は、あなたの心が鳴らす小さなブザー
・自分らしい言葉は「足し算」より「引き算」で見つかる?
「まあ、これでいいか」が、一番コワい?!
AIに文章を書いてもらうと、ほんの数秒で、それらしい文章が出てきます。
文法もきれい。
言葉も豊富。
文章としても、ちゃんとまとまっている。
だからこそ、忙しい毎日の中では、ついついこんな気持ちになってしまいます。
「まあ、格好いいし、これでいいか」
「自分で一から考えるより楽だし、このまま使っちゃおう」
うんうん。
その気持ち、よく分かります(^_^;)
でも、ここでちょっとだけ立ち止まってみてほしいのです。
その文章を読んだとき、
「……なんか違うな」
と思うこと、ありませんか?
実は、この小さな「なんか違う」が、とても大事なんです。
「それっぽい言葉」は、とっても便利
AIは、世の中にあるたくさんの文章をもとに、私たちが「それっぽい」と感じる言葉を組み立てるのが得意です。
だから、こちらが何も細かく伝えなくても、
「いかにも広告らしい文章」
「いかにも仕事ができそうな文章」
「いかにも立派な挨拶」
を、あっという間につくってくれます。
これは、とても便利なことです。
……ところが、です(^_^;)
そのまま使ってしまうと、ちょっと困ったことが起きる場合があります。
きれいなんだけれど、どこかよそよそしい。
立派なんだけれど、誰が書いたのか分からない。
勢いはあるけれど、なぜか心に引っかからない。
そんな「顔の見えない言葉」になってしまうことがあるんですね。
前回は、AIに答えを丸投げしてしまうと、自分の頭を使う機会が減ってしまう「認知の松葉杖」というお話をしました。
今回も、実はその続きです。
AIが出した答えを、
「まあ、これでいいか」
と、そのまま流してしまう。
その瞬間、私たちは自分の「考えるハンドル」を、ちょっとだけ手放しているのかもしれません。
「なんか違う」は、心の防犯ブザー
では、どうすればいいのでしょうか?
難しいことをする必要はありません。
AIが出してきた文章を読んで、
「うーん、なんか違う」
「ちょっと大げさだな」
「こんな言い方、普段の自分はしないな」
「なんだかよそよそしいな」
と感じたら、そのまま立ち止まってみる。
これだけでいいんです。
この「なんか違う」という感覚。
私は、あなたの心が鳴らしてくれる小さな防犯ブザーみたいなものだと思っています。
「ちょっと待って!」
「ここには、あなたの体温が入っていないよ」
「普段のお客さんや仲間との距離感と、ちょっと違うよ」
そんな風に、心が教えてくれているんですね。
だから、
「AIの文章にケチをつけているみたいで悪いな」
なんて思わなくて大丈夫です。
むしろ、その「ダメ出し」こそが、自分の頭で考え始めたサインなんです(^^)
「自分らしい文章を書いて!」は、ちょっと難しい(^_^;)
とはいえ、ここで困る人もいると思います。
「なんか違うのは分かりました」
「じゃあ、自分らしい文章に書き直してください」
……と言われると、急に手が止まってしまう。
これも、よく分かります(^_^;)
ゼロから素敵な言葉を考える。
気の利いた表現をひねり出す。
オリジナリティを加える。
こういう「足し算」の作業は、けっこう頭を使います。
仕事で疲れている夕方なんかに、
「さあ!あなたらしい言葉を考えてください!」
と言われたら、
「もう、AIが出した文章でいいじゃん……」
となってしまうのも無理はありません(笑)。
そこで、私はちょっと別の方法をおすすめします。
「足し算」ではなく、「引き算」から始めるんです。
赤ペン一本で、「違和感マーカー」
たとえば、季節のおすすめ商品として「秋のりんご」を紹介する文章をAIに作ってもらったとします。
AIは、こんな文章を出してきました。
「【感動必至!】秋の味覚を極めた、至福のひとときをお届け。
大自然が育んだ厳選された大人の贅沢。
芳醇な香りと至高の味わいを、心ゆくまでご堪能ください」
うん。
文章としては、ちゃんとしています。
高級デパートのチラシに載っていても、別におかしくありません。
でも、自分がこの文章をお客さんに話しているところを想像してみてください。
「……うーん」
ちょっと背中がムズムズしませんか?(^_^;)
そこで、心の中に赤ペンを一本持ってみます。
「【感動必至!】」
→ 大げさすぎるな。
「至福のひととき」
→ こんな言葉、普段使わないな。
「厳選された大人の贅沢」
→ うちのお店っぽくない。
「至高の味わい」
→ うん、これは絶対言わない(笑)。
こんな風に、
「これは自分じゃない」
と思った言葉を、どんどん消していく。
私はこれを、**「違和感マーカー」**と呼んでいます。
どうでしょう?
「自分らしい素敵な文章を書いてください」
と言われるより、
「自分なら絶対に使わない言葉を消してください」
と言われたほうが、ずいぶん簡単そうじゃありませんか?
「何を足すか」より、「何を消すか」
実は、「自分らしさ」って、最初から立派な言葉で説明できるものではないんですよね。
「あなたの仕事へのこだわりは何ですか?」
と聞かれると、
「えーっと……」
となってしまう。
でも、
「この文章、なんか嫌じゃない?」
と聞かれたら、
「うん。これは嫌だ」
と、案外すぐに答えられたりします。
「気取った言い方は嫌だな」
「お客さんには、もっと気軽に話しかけたい」
「大げさに褒めるより、本当に美味しいところを伝えたい」
そんな「嫌だな」「違うな」を一つずつ見つけていくと、だんだんと、
「じゃあ、自分は何を大切にしているんだろう?」
が見えてきます。
だから、「違和感」は邪魔者ではありません。
自分らしさを見つけるための入口なんです。
削っていくと、最後に「自分」が残る
彫刻家が大きな岩を削って、少しずつ形を作っていくように。
言葉も、余計なものを削っていくことで、本当に伝えたいものが見えてくることがあります。
さきほどのりんごの文章から、違和感のある言葉を全部取り除いてみます。
すると、残るのは、
「今日のおすすめを伝えたい」
「今年のりんごは美味しくできた」
「ぜひ食べてみてほしい」
そんな、ごくごく素朴な気持ちです。
そこまで来たら、もう一度AIにお願いしてみましょう。
たとえば、
「大げさな表現は使わず、近所のお客さんに気軽に話しかけるような文章にしてください」
と伝えてみる。
すると、
「おはようございます!
今年の秋映りんご、蜜がたっぷり入って、すごくジューシーに仕上がりました。
味見でひとつ切ったら、手が止まらなくなったくらいです(笑)。
お店に並べておくので、ぜひ食べてみてくださいね」
こんな文章に変わっていきます。
もちろん、これが「正解」というわけではありません。
大切なのは、AIが出してきた文章をそのまま使うのではなく、
「これは違う」
「これは自分っぽくない」
と、一度自分の目で確かめたこと。
その作業をしたからこそ、最後の言葉に「自分の体温」が残るんです。
「なんか違う」は、考えるチカラのスタート地点
AI時代に「自分の頭で考える」と聞くと、
「鋭い質問を考えなきゃ」
「論理的に考えなきゃ」
なんて、ちょっと難しく感じてしまうかもしれません。
でも、そんなに難しく考えなくても大丈夫。
AIの文章を見て、
「うーん、なんか違う」
と感じる。
「この言い方は、自分なら使わないな」
と気づく。
そして、赤ペンで一本線を引くように、いらない言葉を削っていく。
それだけでも、立派に「考える」が始まっています。
AIがどれだけ流暢な言葉を出してきても、
「はいはい、そうですか。でも、私はそうは思わないんだよな」
と、ちょっと立ち止まってみる。
その小さな違和感を大切にしてみてください。
もしかすると、その「なんか違う」の中にこそ、
あなたの仕事のこだわりや、
あなたらしい人との向き合い方が、
ひっそり隠れているのかもしれません(^^)
無理に立派な言葉を足さなくても大丈夫。
まずは一本の赤ペンで、
「これは、いらない」
と消してみる。
AI時代の「考えるチカラ」。
その第一歩は、案外そんな小さなところから始まるのかもしれません。

Q1:AIが作った文章がきれいなら、そのまま使ってもいいんじゃない?
A:きれいな文章でも、自分や相手との距離感に合わないことがあります。
「なんか違う」と感じたら、そこで一度立ち止まってみることが大切です。
Q2:「なんか違う」と思ったけれど、自分らしい文章が書けません…。
A:最初から良い言葉を考えなくても大丈夫です。
まずは「自分なら使わない言葉」を消していく「引き算」から始めてみましょう。
Q3:「違和感マーカー」って、具体的には何をするの?
A:AIの文章を見ながら、「大げさだな」「自分はこんな言い方をしないな」と感じる言葉に、心の中で赤線を引いて消していきます。
そうすると、自分が大切にしている言葉や表現が少しずつ見えてきます。

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