第4回:AIに答えをもらい続けると、「考える力」はどうなる?


・AIに「わかったつもり」にさせてもらっていませんか?
・カーナビがなくなった途端、道がわからなくなる理由
・AIを「答えをくれる機械」ではなく「ヒントをくれる家庭教師」にする

パソコンの画面に向かって、AIにちょこちょこっと質問する。

すると、ほんの2〜3秒で、驚くほどきれいに整理された文章が、サーッと画面に現れる。

そんな瞬間を体験すると、

「おぉ、すごい!」

「なんだか自分まで頭が良くなった気がするぞ」

なんて、ちょっと嬉しくなりますよね(^^)

ところが。

そんな「便利で気持ちいいAI」に、少しだけ気をつけたいことがあるんです。

たとえば、こんな場面を想像してみてください。


■「よし、完璧に理解した!」……あれ?

仕事で、難しくて分厚い資料を読むことになったとします。

ページをめくっても、専門用語ばかり。

「うーん、これはちょっと読むのが大変だなぁ……」

そこで、AIに資料を渡して、

「この資料の内容を、わかりやすく要約してください」

とお願いしてみる。

すると数秒後。

重要なポイントがきれいに整理された文章が、画面に出てきます。

「なるほど!」

「要するに、こういうことなのね」

なんだか、難しい資料を完全に理解できたような気分になります。

ところが、その数分後。

同僚から、

「さっきの資料って、要するに何がポイントだったの?」

と聞かれたら……。

「あ、ええと……」

「すごく論理的な内容で……」

「たしか、3つくらい柱があって……」

……あれ?

さっきまで「完全にわかった!」と思っていたのに、自分の口からは何も出てこない。

慌ててパソコンを開いて、もう一度AIのまとめを確認する。

そんな経験、ありませんか?(^_^;)

画面に答えが出ている間は、ちゃんと理解できた気がする。

でも、自分の言葉で説明しようとすると、何も出てこない。

どうして、こんなことが起きるのでしょうか?


■カーナビを外された途端、迷子になる

この現象、実は私たちが日常で使っている「ある道具」と、ちょっと似ているんじゃないかと思うんです。

そう。

カーナビです。

初めて行く場所でも、

「200メートル先、右方向です」

「次の交差点を左です」

と教えてくれる。

私たちは、その通りにハンドルを切っていけば、迷わず目的地に到着できます。

とても便利ですよね。

ところが。

同じ道を何度か走って、

「このあたりの地理は、もう頭に入ったぞ」

と思っていたある日。

突然、カーナビが故障してしまったらどうでしょう?

「あれ……?」

「ここ、何回も通ったはずなんだけど……」

「次は右だっけ? 左だっけ?」

何度も通った道なのに、案内がなくなった途端、急に不安になってしまう。

道路の景色も、看板も、交差点も、実は自分の頭にはそれほど残っていなかったことに気づくんですね。

ナビがある間はスイスイ走れる。

でも、ナビを外された途端、迷子になる。

便利な道具を使っているうちに、

「自分の力で覚えた」

と思い込んでしまうことがあるんです。

AIにも、ちょっと似たところがあるんじゃないでしょうか。


■「松葉杖」は、悪い道具ではありません

ここで出てくるのが、今回のタイトルにある「認知の松葉杖」という考え方です。

少し難しい言葉ですが、イメージはとても簡単。

怪我をして歩けないとき、松葉杖は本当にありがたい道具ですよね。

痛い足を支えてくれる。

自分一人では歩けないところを、助けてくれる。

まさに頼れる相棒です。

でも、もし足がすっかり治ったあとも、

「こっちのほうが楽だから」

「松葉杖を使ったほうが早いから」

と、ずっと松葉杖に体重を預け続けていたら……。

自分の足は、どうなるでしょうか?

……オチが見えてきましたね(^_^;)

自分の足で体を支える機会がなくなれば、足の筋肉はだんだん使われなくなってしまいます。

AIも、これと似たことが起こる可能性があります。

AIに考えてもらう。

AIにまとめてもらう。

AIに答えを出してもらう。

それ自体が悪いわけではありません。

でも、「自分で考える前に、いつもAIに答えをもらう」という使い方を続けていたら……。

私たちの「考える筋肉」は、どうなるのでしょうか。


■「AIを使ったら成績アップ!」……でも、その後は?

元のコラムでは、この話を考える材料として、ペンシルベニア大学ウォートン校で行われた、約1,000人を対象とする実験を紹介しています。

AIを使って練習問題に取り組んだグループは、練習中の成績が大きく伸びました。

画面を見ると、答えがどんどん出てくる。

「おぉ、勉強が進んでいる!」

そんな感覚にもなりますよね。

ところが、その後にAIを使えない実力テストを受けてもらうと、自力で勉強していたグループよりも成績が低くなった、という結果が紹介されています。

さらに45日後に記憶の定着を調べても、AIに頼っていたグループでは知識があまり残っていなかった、とされています。

ちょっと怖い話ですよね……(T_T)

つまり、

「その場ではできた」

ことと、

「自分の力として身についた」

ことは、どうやら同じではないんです。

AIがすぐに答えを出してくれる。

これは、とても便利です。

でも、その便利さによって、自分の頭が「ウンウン唸る時間」まで全部なくしてしまったら、どうでしょうか。


■頭が「ウンウン唸る」時間は、ムダじゃない

私たちが何かを覚えたり、理解したりするときには、

「うーん、どういう意味だろう?」

「この言葉で合っているかな?」

「さっきの話と、どうつながるんだろう?」

と、頭を悩ませる時間があります。

この「ちょっと困る時間」が、実は大切なんですね。

自分の記憶を引っ張り出したり、

「あれでもない、これでもない」

と考えたりする。

そうやって頭を使うからこそ、少しずつ自分の知識になっていく。

逆に、わからないことがあるたびに、

「AIさん、答えをお願いします!」

と全部お任せしてしまったらどうでしょう。

重たいバーベルを自分では一度も持ち上げず、

隣のトレーナーさんに全部持ち上げてもらって、

「今日もいい筋トレしたゼ!」

と言って帰るようなものです。

……それでは、いつまで経っても自分の筋肉は育ちませんよね(^_^;)


■では、AIを使わないほうがいいの?

ここで、

「じゃあ、AIを使っちゃダメってこと?」

と思った方もいるかもしれません。

いえいえ。

そんな「AI禁止令」を出したいわけではありません(^^)

私だって、カーナビを使います。

知らない場所に行くときなんて、もう大活躍です。

AIも同じです。

大切なのは、

「使うか、使わないか」ではなく、「どう使うか」

なんじゃないでしょうか。

たとえば、AIに「答えそのもの」をもらうのではなく、

「ヒントをくれる家庭教師」

になってもらう。

そんな使い方です。


■AIに「答え」ではなく「ヒント」をもらう

たとえば、お礼メールを書こうとしているとします。

いきなり、

「お礼メールを書いてください」

とAIにお願いするのではなく、

こんな風に聞いてみる。

「今、お礼メールを書こうとして悩んでいます。

全部の文章を代わりに書くのではなく、相手に気持ちよく受け取ってもらうための視点を、2つだけ教えてください」

これなら、答えを丸ごともらうわけではありません。

AIからヒントをもらって、

「じゃあ、自分ならどう書こう?」

と、自分の頭を動かすことができます。

あるいは、自分で一度文章を書いてから、

「この文章、自分なりに一生懸命書いたんだけど、なんだか言いたいことがぼやけています。

書き直さずに、どの部分がわかりにくいかだけ教えてください」

と聞いてみる。

これも面白いですよね。

AIに完成品を作ってもらうのではなく、

「ここ、ちょっとわかりにくいですよ」

と教えてもらう。

そして最後は、自分で考えて直す。


■「家庭教師AI」なら、頭のハンドルを手放さなくていい

こう考えると、AIとの付き合い方が少し変わってきませんか?

AIに全部やってもらうのではなく、

「先生、ちょっとヒントだけください」

とお願いする。

すると、AIはあなたの代わりに考える存在ではなく、

あなたが考えるための相棒

になってくれます。

最後の言葉を選ぶのも、

どちらの案にするか決めるのも、

「やっぱり、こっちのほうが自分らしいな」と判断するのも、

自分自身。

AIに頼りながらも、考えるハンドルは自分の手に残しておくんです。


■「ウンウン唸る時間」を、そんなに嫌わなくてもいい

自力で考えていると、

「うーん……」

「どっちの言葉がいいかな」

「あれ? 何を伝えたいんだっけ?」

と、頭を抱えることがあります。

効率だけを考えたら、

「なんてタイパの悪い時間なんだ!」

と思うかもしれません。

でも、その時間こそが、自分の力になっていることもある。

すぐに答えが出ない。

ちょっと迷う。

何度も考え直す。

そうやって頭に汗をかいた分だけ、その経験は少しずつ自分の中に残っていくんじゃないでしょうか。

だから、AI時代だからといって、

「もっと早く!」

「もっと効率的に!」

と、いつも急がなくてもいいんです。


■たまには「ナビなし」で歩いてみる

カーナビがあると、とても便利です。

でも、たまにはナビの案内をふっと切って、

自分の目で街並みを眺めてみる。

看板を見ながら、

「こっちかな?」

と考えてみる。

少し遠回りしてしまうかもしれません。

迷うかもしれません。

でも、そうやって歩いた道は、きっと次に来たときの自分の力になります。

AIも同じです。

毎回、最初から最後まで答えを出してもらわなくていい。

「まず自分で考えてみる」

「ちょっと困ったらAIにヒントをもらう」

「最後は自分で決める」

そんな使い方があってもいいんじゃないでしょうか。

AIは、私たちの頭の代わりになるものではなく、

頭を使うための「相棒」にもなれる。

そう考えると、ずいぶん気楽になりますよね(^^)

たまにはAIに答えをもらわず、

「うーん、どうしようかな……」

と、自分の頭でウンウン唸ってみる。

そんなちょっとした「不便」の中にこそ、

AI時代に大切な、

「自分のアタマで考える楽しさ」

が、静かに残っているような気がします。

Q1:AIに答えを出してもらうのは、ダメなんですか?

A: いいえ、AIを使うこと自体が悪いわけではありません!

大切なのは、全部を任せきりにせず、ときにはヒントをもらって自分でも考えることです。

Q2:どうして「ヒント」だけをもらうんですか?

A: 自分で考えたり、迷ったりする時間が、知識や考えるチカラにつながるからです。

AIを「答えをくれる機械」ではなく、「考えるための家庭教師」として使う方法もあります。

Q3:忙しい仕事では、全部AIに任せたほうが早くないですか?

A: 時間を節約するためにAIへ任せることも、もちろん大切です(*^^*)

ただ、自分のチカラを伸ばしたい場面では、あえてヒントだけもらって、自分で考える時間を残してみるのも一つの方法なんです。

Q:仕事で分厚い資料を読むとき、AIに丸投げしないで自分のチカラにするには、どう頼めばいいですか?

A: いきなり「要約して」と全部お任せするのではなく、

「この資料の大事なキーワードやポイントを、3つだけ教えて」

と聞いてみるのがおすすめです!

AIに見取り図(地図)だけを教えてもらって、本文は自分の目で確かめながら読んでみる。

そうすれば、あとから「要するにどういうこと?」と聞かれても、ちゃんと自分の言葉でスラスラ説明できるようになりますよ(^^)

Q:日々のメールや書類を作るとき、実務でAIを「家庭教師」にするには、どう頼めばいいですか?

A: ゼロから「代わりに書いて」と頼むのではなく、自分が書いた下書きを渡して、

「文章は直さなくていいので、わかりにくいところや、誤解されそうな部分だけ教えて」

と聞いてみてください。

AIに完成品を作らせず、「赤ペン先生」になってもらうイメージです。

最後は自分の手で言葉を選んで直すことで、文章を書く筋肉が自然と育っていきます!

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