【長文】なぜ言いたいことが伝わらない? ~『なぜならチェーン』という文章作法
▼ あなたの文章がしているのは告知?それとも主張?
私たちの周りにあるチラシやダイレクトメールの多くは「商品名」と「価格」、そして「商品の紹介文」くらいしか載っていません。
これらの文章がやっているのは、「○○という名前の商品が、いくらで売っている」というような『事実の告知』です。
そのような形の広告が全盛だった時代・・・、それはモノを作れば売れた時代でした。
こんな新製品が出た、こんな商品が今日は安い・・・そのようなコトを”告知するだけで売れた”のです。
その頃は、それで良かったのでしょう。しかし、現在は状況が全く違っています。
お客様の“選択肢”は格段に増えました。
あるモノが欲しいと思ったら、いくつもの候補の中から選べるのが普通です。
そして、ある商品を買うことに決めた人が、さらにそれを買うお店を選べるのも普通のコトです。
そのような時代に、”単なる告知”でお客様が自分のお店、自分の商品を選んでくれるでしょうか?(^_^;)
そう簡単にはいかないということは、皆さんの方がよくご存知でしょう。
現代は『告知』だけで売れない時代なのです・・・(T_T)
もちろん例外的に告知だけで商品が売れる場合もあるでしょう。
しかし、それはお客様にある程度の顕在的なニーズ、「そんな商品があったら欲しいな」という気持ちがあったからだと考えた方がいいでしょう。
「運が良かった」と言っても良いかも知れません (^_^;)
たまたま欲しいと思っている人の前に、その商品を提示することができた・・・このラッキーを得るためには何度も何度もチャレンジする必要があるでしょう。
スーパーのチラシのように何度も打つことで効果を得る広告もあります。
でも、「たまたま、それが欲しいと思っていた人の目に留まるのを待つ」のは、あまりにも“運任せ”で、多くの場合は広告費がかさんで仕方ありません・・・。
では、『告知』でないとしたら、何をしていけばいいのでしょう?
お客様の選択肢が非常に広い現代においては、お客様に向けて企業側からの“主張”をすると良いのです!
告知だけではなく、「あなたがその商品をどう思っているか」という“主張”・・・それが今、求められているのです。
▼ 情報過多の現代・・・人はより”わかりやすい情報”を求めている
では、なぜ『主張』をしていくと良いのでしょうか?
それは、『人のココロの仕組み』と『現代の社会状況』を考えてみるとわかります。
最近、新しいクルマが発売されました。
そのクルマ、「床が低く、ドアの大きなクルマ」だということが特徴です。
さぁ、今それを聞いて、あなたは何かを考えたでしょうか?
「そうか、そんなクルマが出たのか!それだったら、ウチの家族にいいかも知れないぞ!」と考えた方は、きっと今、クルマを買い換えようとしている人ですね?
フツーの人は、「床が低く、ドアの大きなクルマが発売された」というような『事実』を伝えられたところで、「だったら、こういうコトだな」、「それなら、こう利用できるな」などと考えをめぐらせることはあまりありません (^_^;)
何の考えもめぐらすことなく、ただ読み流す・・・それが普通の反応です。
これは、「人のココロの仕組み」と深く関係があります。
人は外の世界から、様々な情報を常にインプットしていますので、それらの意味合いや意義をいちいち考えるようにはできていないのだそうです。
もし、そんなことを考えなくてはならなかったら、渋谷や新宿なんて看板だらけで3歩と歩けないですからね (^_^;)
また、現代は“情報過多”の時代だと言われています。
雑誌を開いても広告、ポストを開けても広告、メールボックスの中にも広告メールが次々と放り込まれています。
CMを一切見ない日なんて、無いのではありませんか?
そのような状況の中ですから、人はなおさら無意識の内に自分の中に情報を取り込まないようになっています。
そうしなくては、情報の波に飲み込まれてしまい、必要な情報が来た時に何も考えられなくなってしまうと防衛本能が働くのでしょう。
いちいち、情報について考えをめぐらせたくない・・・
身の回りにある情報が多すぎる・・・
このような二つの理由があるため、単なる事実情報の告知はもう読まれないのです・・・。
そこで事実情報の代わりに使われたのが、『主張』です。
読み手が自分で事実情報を組み合わせて“答え”を出すという作業をしなくてすむように、「だから、どうだ」、「だから、こうなのです」というひとつの“答え”をあらかじめ出しておくこと・・・それが今、求められています。
「床が低く、ドアの大きなクルマが新しく発売された」ということだけなら、これは『事実情報』です。
ここに一つの“答え”、「だから、どうなのだ」という見解を加えてみましょう。
例えば、「だから、お年寄りや小さなお子さんでも乗り降りがしやすくなる」というような“答え”を加えてみます。
そうすると先ほどの文章は、「床が低く、ドアの大きなクルマが新しく発売されました。乗り降りしやすいので、お年寄りや小さなお子さんのいる家庭にピッタリです!」と変化します。
どうでしょう?
こちらの方が、ただこういうクルマが新しく発売されたと伝えられるよりも、読みやすく、イメージもしやすかったのではないでしょうか?
このような“答え”を加えたもの・・・それがあなたの『主張』となります。
本来なら読み手が行う、事実を組み合わせて答えを出すという作業を書き手が肩代わりした、読み手にやさしい『わかりやすい情報』と言えるでしょう。
情報過多の時代だからこそ、読み手にやさしい文章が好まれる・・・
あなたが書く文章は『主張』である方が良いのは、そのような理由からなのです。
▼ 『意見』+なぜなら+『理由』 ・・・ それが『主張』です
とは言っても、その『主張』がカンタンにできれば苦労はありませんよね?(^_^;)
そこで今回は、『主張の仕方』について基本的な文章作法をお伝えしましょう!
それは、『なぜならチェーン』という文章作法。(変な名前ですが、それなりの意味がこの名前には込められています!)
まず、あなたの『主張』を分解する作業をしてみましょう。
あなたがホームページやダイレクトメールなどに“売るための文章”を書く時・・・
「このエアコンが今、買いですよ!」
「お客様には、この銀のネックレスをおすすめします」
と、あなたがお客様に言いたいことがありますよね?
ここでは、その“言いたいこと”を、あなたの『意見』と呼ぶことにしましょう。
この『意見』を明確にすることから、この文章作法は始まります。
「こういうコトを伝えたい!」という“意見”がハッキリしない内に書き始めてしまうと・・・その文章は「床が低く、ドアの大きなクルマが発売されました」というような、事実情報をただ並べただけのものになってしまう可能性が高いです・・・。
このような文章があまり効果が無いことは、先ほどお伝えいたしました。
あなたの文章を良いものにするためには、まずあなたの『意見』をハッキリさせることが肝心です。
「この商品が今、一番のオススメ!」
「おさかな好きな方に、この特産品セットを買って欲しい」
など、何でも構いません。
あなたが言いたいこと=『意見』をまずは書いてみて下さい。
書けましたか?
そうしたら、その文の後ろに「なぜなら、」という言葉を付けてみて下さい。
「この商品が今、一番のオススメ!なぜなら、・・・」
「おさかな好きな方に、この特産品セットを買って欲しい。なぜなら、・・・」
このようになりましたね?
この「なぜなら」の後には、あなたがその『意見』を持つに至った『理由』を書いていくのです。
「この商品が今、一番のオススメ!なぜなら、NEWモデルが出たために値段が安くなってお買い得だから」
「おさかな好きな方に、この特産品セットを買って欲しい。なぜなら、このセットはメジャーな魚のほか、あまり獲れないけれど、地元ではおいしくて人気のお魚も入っているから。魚好きならその良さがわかってくれるはず!」
と、このような感じになります。
このように、『意見』を書いたら、その後に「なぜなら、」と繋げる。そして、その後に『理由』を述べていく。
これが、【なぜならチェーン】の文章作法の基本です。
☆Point! 主張 = 意見 + “なぜなら” + 理由
『主張』を、このように『意見』と『理由』がセットになったものだと考えると、よりわかりやすいでしょう。
『意見』だけでも、『理由』だけでも、お客様にちゃんと伝わる文章にはなりません。
その二つがしっかり含まれている『主張』を書いていきましょうね!
▼ よくある間違い = 理由になっていない”理由”
ここで一つ、文章を書く際に間違ってしまいやすいポイントを挙げておきましょう!
よくある間違いは、「このエアコンが今、買いですよ!このエアコンは除湿機能が高機能で・・・」と、「今、このエアコンを買うと良い理由」ではなく、「エアコンの機能」の説明に入ってしまうことです。
「このエアコンが今、買いですよ!」という主張をするのであれば、「なぜ、今が買いなのか?」を説明する理由が述べられなくてはいけません。
「このエアコンは除湿機能がすばらしいので、じめじめするこの季節に買っておくといいんです!」
「今なら取り付け費用を全額サービスしています」、「今ならポイントを5倍つけております」
「人気商品ですので、今を逃がすとこの後の入荷がいつになるか・・・」
というような、”今が買い”ということの”理由”を述べていく必要があるのです。
「今だけ大サービス!高機能パソコンです!DVD-ROMドライブ付き!」
「期間限定!おいしい牛肉です。送料サービス」
というような表現、よく見かけますよね?
果たしてこれらは、“主張”と言えるでしょうか?
そうですね。これらは“主張”と言えません・・・。事実をただ並べただけのものですね。
そうすると、お客様はそれらを頭の中で組み立てて読まなくてはなりません。
そして、おそらく多くの方がそれを意識してやりません (^_^;)
その結果、この文章は読み飛ばされてしまうのです・・・。
“意見”と“その理由”を並べて書く
それだけでも、読みやすくなり、お客様に「なるほど」と思ってもらえますよ (≧∇≦)/
▼ 『言ったつもり』にご注意を!
こんな文章がありました。
「お年寄りにやさしいクルマです。なぜなら、ドアが大きいのです」
これは、ちゃんと『主張』になっているでしょうか?
「お年寄りにやさしいクルマです」と『意見』がちゃんと表現されています。
その後に「なぜなら、」と続いて、『理由』も示されています。
でも・・・これは『主張』とは言えないのです。
なぜか?
これもまた、「理由になっていない『理由』」が挙げられているからなんですね。
おそらく書いたご本人は、
ドアが大きい → 開口部が広い → 乗り降りがとてもラク → お年寄りにやさしい
と、このように考えたのでしょう。
それで、「お年寄りにやさしいクルマです。なぜなら、ドアが大きいのです」という言葉が出てきたのだと思います。
でも・・・筆者のアタマの中ではつながっていたとしても、間がすっぽり抜け落ちてしまっていては、お客様には伝わりにくいのです・・・。
考えを中途半端に切り取ってしまわずに、ちゃんと筋道立てて説明していくようにしてみましょう。
そうすると、先ほどの文章はこうなります。
「お年寄りにやさしいクルマです。なぜなら、ドアが大きく、入り口が広いため、乗り降りがとってもラクだからです。」
これなら、ちゃんと意図が伝わりますね (*´ェ`*)
「ドアが大きい」ということだけしか伝えなければ、逆に「ドアが大きいなら開け締めがタイヘンそう・・・。お年寄りにはむしろ優しくないんじゃないかな?」と考えてしまう人もいるかも知れません。
自分の意図をハッキリと伝えるため、いらぬ誤解を生まないため、『理由』がちゃんとその『意見』の論拠になっているかどうかを確かめるクセをつけておきましょう。
でも・・・意外と書いている本人にはわかりにくいものなんです・・・コレ (^_^;)
なぜかと言うと、書いている本人は「ちゃんと意見の理由となることを言った“つもり”」なんですね。
上の例でも筆者の頭の中では、ドアが大きいということと、お年寄りにやさしいクルマだということはちゃんとつながっているのです。
あくまでも、「筆者の頭の中では」の話ですが、確かにつながっています。そのため、自分ではイマイチ気づきにくいんですね。
これを防ぐ最も良い方法は、「第三者に文章を見てもらうこと」が一番です。
同僚でも、友人でも構いません。第三者の目で読んだ時に、通じるかどうかを確認するのです。
その際に、「意見と理由に筋が通っているか」を意識して読んでもらうと、より良いでしょう。
▼ お客様が買わないのは、他に選択肢が残っているから
これまで、『なぜならチェーン』文章作法の「なぜなら」の部分についてお話してきました。
ここからは、「チェーン」の部分についての話を始めていきましょう。
どうして、チェーンという名前がついているのか?
それは、前項までで作っていただいた「○○です。なぜなら、△△だからです」という『主張』をより強いものにするために、さらに「なぜ、××はダメなのか?なぜなら・・・」という一文を加え、鎖のようにつないでいくからなのです。
この「なぜ、××ではダメなのか?」の、××には、競合商品の特徴を入れてみて下さい。
そして、あなたが「××だけでは、足りません」という『意見』を述べ、それに対する『理由』を付け加えていくのです。
わかりやすいように、例を挙げながら、詳しく見ていくことにしましょう。
「お年寄りにやさしいクルマです。なぜなら、ドアが大きく、入り口が広いため、乗り降りがとってもラクだからです。」
この後にさらに「なぜ××はダメなのか?なぜなら・・・」という言葉をつないでいきます。
他社のクルマで「床が低くて、お年寄りにやさしい」というモノがありますので、今回はこの特徴を取り上げてみましょう。
「お年寄りにやさしいクルマです。
なぜなら、ドアが大きく入り口が広いため、乗り降りがとってもラクだからです。
お年寄りが乗り降りしやすい工夫に、「床を低くする」というものがありますが、それだけでは不十分です。
なぜ、床が低いだけではダメなのでしょう?
なぜなら、ドアが大きくないとどうしても入り口が狭くなり、体を横にして入るなどしなくてはなりません。お年寄りにはちょっと大変です。」
このようにもう一つ理由が加わることで、「ドアが大きいことは、お年寄りにやさしい」という意見がより強固なものになりました。
さらに、他社商品の弱点をお客様に認識してもらうことができます。
あなたの商品にも、競合商品があることでしょう。
それら競合商品の特徴を「それだけでは不十分です」、「それは、あなたのケースに合わないかも知れません」と伝えていくことで、あなたの商品の優位性をお客様に認めてもらうことができます。
ここでポイントなのは、競合商品を直接、否定してしまわないことです。
「ドアが小さいクルマはダメです」、と直接的に競合商品を否定してしまうと、敵を作ってしまうばかりか、お客様にもあまり良い印象を持たれません。
そのために、「××も良いけれど、それだけでは不十分です」と、何かを追加する余地があることを知らしめたり、「××はこういう場合ならとても良いのですが、今のあなたにとっては○○の方が良いでしょう」と伝えたりするようにしましょう。
他社を攻撃するネガティブキャンペーンではなく、お客様を迷わせているものを取り除く作業と考えるといいですね (*´ェ`*)
そのようにして、競合商品を選ぶという選択肢を一つずつ消していくことで、最後に「あなたの商品も買わない」という選択肢だけが残ります。
そうなったら、「今、買わないとダメ。なぜなら・・・」と、最後の『なぜならチェーン』をつないで完了です。
・・・
『意見』を書いて、その次に「なぜなら・・・」と『理由』を書く
それだけのことでも、あなたの書く文章がとっても論理的になって、説得力を増すはずです。
ぜひ、『なぜならチェーン』の文章作法、試してみて下さい!
「ウチの新入社員にSNSやメルマガの担当を任せたい」
「だから、文章のコツを教えてあげてもらえませんか?」
そのようなご要望で、「ことのは塾」に勉強会を依頼される企業やお店が春は多くなります。
・・・
「若い人ならSNSに慣れているだろう」ということで、新人さんが抜擢されることも多いのですが…
残念ながら、「書くこと」に慣れている人ばかりではありません…。
それに個人のSNSと、会社のSNSでは勝手が違いますし、かかるプレッシャーも大きく違います。
そして、一番の“問題”は・・・
「社内に教えてくれる人がいないこと」
多くの企業では、SNSやメルマガの文章をつくる時のマニュアルなどは無く、担当者個人のセンスに任されているところが少なくありません。
「若い人の感性で、自由にやってよ」
なんて言ってしまっては、新人さんは萎縮してしまいます…。

「ことのは塾」は、こうした新人さんを『商品紹介の即戦力』にするのが得意です!
・ どのような内容を書けばいいのか?
・ 目にとまるキャッチコピーはどう書けばいいのか?
・ “わかりやすい文章”にするために気をつけたいコト
・ 実際に購入につなげるためにはどんな“仕掛け”をすればいいのか?
そのような『商品紹介文のキホン』を20年間、お伝えしてまいりました。

最近では、オンラインで全国各地のスタッフを集めて、一斉に研修会を行う、というスタイルも定番になっています。
「自社商品のキャッチコピーをつくる」という作業を共同でやることで、新人さん同士が仲良くなる、という効果を狙っている、という人事部の方もいらっしゃいました。
・・・
必要なのに、なかなか教えてもらう機会の無い、「商品紹介文の作り方」。
この春、みなさんで学んでみるのはいかがでしょうか?
「ことのは塾」の研修会の詳細&お申し込みはこちらのページからお願いします!
